2025年3月5日、日本におけるサステナビリティ情報開示の新たな基準として「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)」が策定した基準が最終化されました。本記事では、SSBJ基準の概要、適用時期・対象企業、そしてそれに伴い企業に求められる対応について解説します。最も早い企業では、2026年4月からの年度で対応が義務化されるため、早急な体制構築が必要となります。
SSBJ開示基準とは?
SSBJ(サステナビリティ基準委員会)は、企業のサステナビリティ情報の開示を標準化するために設立された組織です。SSBJ開示基準は、国際的な動向を踏まえつつ、日本市場に適した形で作成されました。
本基準は、IFRS財団の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定した「IFRSサステナビリティ開示基準(IFRS S1・S2)」をベースにしており、特に気候関連リスクや機会に関する情報開示が強調されています。当初、日本独自の規定が含まれていましたが、最終化された基準では国際基準との整合性が強化され、独自規定が削減されました。
さらに、企業の基準適用を支援するために、SSBJは2025年3月中に基準適用ハンドブックを公開する予定です。このハンドブックには、GHG排出量の算定期間を決算期と合わせる計算方法や、用語の定義などが掲載される予定です。
適用時期と対象企業
⾦融庁は新基準に基づき、2027年3月期から段階的に企業に開⽰を義務づける⽅針です。まず、時価総額3兆円以上の東証プライム上場企業に対して義務付けられ、その後1兆円以上、5000億円以上と適用範囲が広がり、最終的には東証プライム上場全企業(約1600社)までを対象とする考えです。
また、サプライチェーン全体での脱炭素化が求められる中、一定規模以上の非上場企業や金融機関も投資家や取引先からの要請により、同様の基準に基づいた開示を求められる可能性が高まっています。供給網全体での排出量削減に向けた共同投資補助など、政府の支援策も進められています。
企業に求められる対応
1. サステナビリティ情報開示の準備
SSBJ開示基準の適用により、企業はサステナビリティ関連の情報を適切に開示する責務を負います。特に温室効果ガス(GHG)排出量や気候リスクへの対応戦略の明確化が求められます。そのため、企業は既存のデータ収集・管理体制を見直し、信頼性のある情報を開示できる体制を整える必要があります。
2. 炭素会計の強化
GHG排出量の開示は、今後ますます厳格化される見込みです。企業は、Scope 1(自社の直接排出)、Scope 2(購入電力に伴う間接排出)、Scope 3(バリューチェーン全体での間接排出)を包括的に測定し、適切な開示を行う必要があります。スコープ3の開示義務化が2027年から段階的に適用されることから、多くの企業が取引先を含めた排出量の把握に向けた準備を進めています。
3. 経営戦略への統合
SSBJ開示基準では、サステナビリティ情報を財務情報と統合することが求められています。これにより、企業は気候変動リスクを経営戦略に組み込み、事業計画の中で持続可能な成長を実現する必要があります。取締役会レベルでの議論を活性化し、ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の重要要素として位置づけることが重要です。
4. ステークホルダーとの対話強化
サステナビリティ情報の開示は、投資家、金融機関、消費者、規制当局など多くのステークホルダーに影響を与えます。そのため、企業は単に報告書を作成するだけでなく、ステークホルダーとの積極的な対話を通じて、開示情報の透明性と信頼性を高める努力が必要です。
今後の展望
SSBJ開示基準の導入により、日本企業のサステナビリティ情報開示の質が向上し、投資家やステークホルダーにとってより信頼性の高い情報提供が可能となります。特に、国際基準との整合性を意識した対応が求められ、グローバル市場での競争力向上にもつながることが期待されます。
また、サプライチェーン全体での開示基準の統一が進むことで、企業間でのデータ共有や協力の重要性が増していきます。企業は今後、SSBJ開示基準の動向を注視しつつ、適切な開示戦略を構築することが求められます。
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